以前、数年にわたって「手仕事の教室」というイベントを開催していた時、
『新米といくらの醤油漬け』のテーマはとても人気がありました。
「手仕事の教室」というのは、基本的には親子さんで参加していただき、
普段スーパーなどで買って食べているような食材を、材料から見て一から作ってみよう、
という主旨のイベントでした。
例えば、こんにゃくをこんにゃく芋から作ったり、いかをさばいていかめしを作ったり。
『新米といくらの醤油漬け』の回は、筋子からいくらをほぐして作るのを実際にやっていただき、
炊きたての新米と一緒に試食をしていただくという内容。
お米が一番おいしい時期に、手づくりのいくらの組み合わせが、言うまでもなくとても美味しいのと、
いくらの醤油漬けが意外と簡単で楽しい!というのが人気の理由だったと思います。
最近、いくらの材料になる筋子がかなり高価になっていて手が出しづらいこともあるのですが、
でもやっぱり、旬の美味しさは味わいたい。
今年はそれでも少し、価格が抑えめな気がするので、機会があればぜひやってみていただけたらなと思います。
『いくらの醤油漬け』の材料はこちら。
※写真では倍量で作っていますが、作りやすい分量として載せます。
■筋子 300g
■塩 ふたつまみ
・A しょうゆ 大さじ4
・A 清酒 大さじ4
・A みりん 大さじ2
しょうゆは、写真に写っているものは「しろたまり」という、白しょうゆの仲間です。
白しょうゆは、一般的な濃口しょうゆよりも原料の大豆の割合が少なく、小麦の比率が多め。
淡口しょうゆよりもさらに色が薄いので、素材の色がきれいに映えます。
今回はいくらの色を活かすために使いました。
※「しろたまり」はさらに、大豆を使わずに作られているので、商品規格上しょうゆという名前が使われていません。
ここは、普通の濃口しょうゆを使っていただいても大丈夫です。仕上がりは、かなり茶色く色づきますが、
白しょうゆ(しろたまり)よりもうま味がしっかりとしますので、それはそれで美味しいです。
みりんは、筆者が長年愛用している、杉浦みりんさんの『愛櫻』1年熟成。
https://www.mirinya.com/story/
※みりんの記事はまた改めてアップします。
みりんはぜひ、本みりんを使っていただいたほうが、まろやかさと味の深みが出るのでおすすめです。
それでは作り方に。
まず一番はじめにやっておく作業は、「調味料を煮きる」という作業。
漬け汁に使う清酒やみりんにはアルコールが含まれているので、いったん沸騰させてそれを飛ばします。
いくらを漬ける時は、しっかりと冷めていることが必要なので(温かいといくらが硬くなったり傷むので)、
初めにやっておいたほうが効率が良いです。
冷ましている間に、筋子をほぐす作業を。
ほぐす作業は、これまでいろいろなやり方を試しました。
冷塩水の中でほぐす、網を使ってほぐす、竹串でほぐしとる、など。
結果、私的におすすめの方法が、
「80℃のお湯に入れてかき混ぜる」という方法。
以前、大量に仕込みをする和食の料理人さんに教えていただいた方法です。
ボウルに熱湯を入れてお水を足しながら、80℃のお湯にします。
このとき、お湯はボウルの半分以下の量にしておかないと、後でやりづらさが出るので注意。
筋子の膜を開いてから、80℃のお湯に入れて
すぐに菜ばしで、円を描くようにぐるぐるぐるっと手早く混ぜます。
さっき、お湯の量はボウルの半分以下に、と言いましたのは、このときお湯の量が多いと、遠心力でお湯がボウルから飛び出るからです。。
すっかり忘れていて一度やってしまいました、、
ぐるぐるするうちに、菜ばしに膜が巻き付いてきますので、そうなったら素早くザルに上げて氷水にとります。
菜ばしに巻き付いた膜についているいくらをはずした後、水に浮いている膜の残りやいくらの薄皮を、何度か水を変えながら取り除きます。
これが残っていると、臭みの原因になるので丁寧に。
たまに膜がついている粒は手ではずします。
ですが、熱湯に入れた効果でほとんどいくらはほぐれていますし、4~5回水を変えればきれいになると思います。
きれいに掃除ができたらザルに上げて。
このとき、粒がかなり白くなっていますが気にせずに。お湯で固くなってしまったわけではなく、水気がきれれば鮮やかな赤色に発色します。
水けがきれたら、塩(ふたつまみ)をふり、やさしく混ぜて、さらにそのまま5分ほど。
塩を加えるとさらに鮮やかになります。
漬ける容器に移して、作っておいた漬け汁を合わせて軽く混ぜる。
これで完成です。
5時間後くらいからが食べごろで、翌日以降のほうがより味がしっかりとします。
冷蔵庫で4~5日。
それ以上になりそうならば、漬け汁をいったんきって冷凍保存もOKです。
炊きたての新米にのせて、おいしい焼き海苔に巻いて食べるのは本当にご馳走。
焼き海苔も、脇役のようでいて、美味しい海苔に出会うと感動します。
筆者のお気に入りはこちら。
有明産の『旬』
https://www.satounori.co.jp/syunn
一番摘みの海苔の中でも厳選された素材が使われていて、香りのよさはもちろん、肉厚でパリッとした歯切れと、
そのあと口のなかでほどける食感が特別な味わいです。
はじめて食べたときは、圧倒的なおいしさにすごくびっくりしました。
新米、いくら、海苔、
幸せな旬の味わい。また来年も、再来年も、ずっと味わいたいですね。