金沢市大野町 ヤマト醤油味噌さんにて「麹と糀のお話」

2022年も年末にさしかかった12月23日。

石川県金沢市の大野町に醸造蔵と販売所のある、ヤマト醤油味噌さんを訪ねました。

ちょうど大雪警報が出た日。雪の金沢。

 

ある知人から、たしかな製品づくりをされている味噌蔵さんとして紹介いただいたのをきっかけに、初めての訪問でした。

 

事前に数種類のお味噌をサイトから購入させていただいたところ、

しっかりと時間をかけて熟成された豊かな熟成香がある、まさに生きたお味噌!

塩かどがなくまろやかで、うま味が深い。

味噌汁も、お味噌のうま味でおいしく味がまとまります。

 

そんなお味噌をお造りになられている背景を教えていただきたく、お話を伺いました。

お話とご案内をしてくださったのは、営業部部長・山本耕平さん。

 

まず、「ヤマト醤油味噌」という社名にもあるように、お醤油とお味噌の両方をお造りになられているのが珍しく感じたので、創業からの歴史について伺いました。

 

初代の明治期は、北海道と北陸を行き来して商いをする北前船の船乗りで、醤油や味噌は製造ではなく商いの商品のひとつだったそうですが、

その後二代目の方が醤油造りを始め、三代目の方がお味噌造りを始められたそうです。

北前船といえば、大阪と北海道を結び、経済のみならず日本の食と文化の伝播に大きく影響した商船ですので、おそらくですが、商材として北陸のお醤油やお味噌が各地で高く評価されたことから、自社での製造に繋がったのかな?と想像しました。

 

現在は四代目の社長さんと工場長さんが、「糀の良さを今に翻訳して伝えたい」、「伝統技術に基づいて、先人たちの作らなかったものを作りたい」とさらなる研究に取り組んでおられるそうです。

 

そういったことから、お醤油とお味噌の両方をお造りになっていますが、

そこで、「麹と糀」のお話。

原料の違いで便宜的に使い分けておられるそうで、

お醤油の麹は、麦と大豆でできるものなので、『麹』の字を。

お味噌の麹は、お米を原料とされているので、『糀』の字を使っています、とのことでした。

※お味噌も、作り手や地域によって麦や大豆を原料にした麹を使うこともあります。

 

どちらにも共通するのは、こうじ菌のチカラ。

2006年に『国菌』として認められた、こうじ菌(ニホンコウジカビ)は、日本だけに存在する菌で、1300年以上の歴史があるそうです。

菌としてのチカラは弱いそうですが、それを使って食品を作るのも日本だけ。

それだけに、その技術というのは、長い年月を経て培われ、伝えてこられたもの。

 

ヤマト醤油味噌さんの、伝統的な製法で発酵と熟成されたお味噌は、木桶の中で半年から2年間寝かせられ、それによって、自然由来のうま味、香り、後味の良い風味が生まれます。

それを「時間がつくる味」と表現されています。

微生物たちの働きで作っていただくものこそ、日本の知恵であり、より自然な食品の姿だというお考えです。

熟成度合いによって、香りや色、風味が変化していきます。

 

そして、火入れをしないこともこだわりのひとつということです。

発酵で生まれる「酵素」を死活させない。

それによって、香り成分、菌類、酵素の働きが残り、カラダ(特に腸)の健康によい働きをしてくれるからなのだそうです。

火入れをすることによって、味や風味が変わりにくくなりますし、冷蔵保存でなくても変化しにくいということはありますが、あえて微生物の自然な働きを残したいということで、

『私たちは腸美人メーカーでもあるんです!』とおっしゃっておられました。

 

またよく、健康的な食事のことを「まごはやさしい」と言いますが、ヤマト醤油味噌さんでは、

「まごはやさしい“こ”」とつき、“こ”は糀・麹のこと。

 

喫禾了では、「お米からできるもの」としてお味噌について取材をしたく、お話を伺ったわけですが、

お味噌以外もお米と発酵はすごく密接で、日本の食文化に深く関わっていることを改めて感じました。

 この模式図を見てまた更に改めて。

日本の伝統的基礎調味料は、カビ、酵母、細菌類と、複合的に関係して出来上がっていることがわかります。

 

和洋中といろいろと選べたり、美食のお店もとっても魅力的ですが、だからこそ日常の家庭での食事ではご飯とお味噌汁を中心に、自然の力を取り入れられるものをいただくことを大事にしたいなと思いました。

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